- 医療に関する選択は人生の選択に他ならない。その人(本人)の人生はその人のものであり、本人の自由な意思に基づいて選択されることを原則とする。一方で「難しいことは○○に任せる」「自分はいいから家族が良いようにしてほしい」「悪い知らせは聞きたくない」という「おもい」も同様に尊重される。病状説明に際してはレディネスの確認から始める。
- 本人の意思決定能力を判断する要素
「理解」:十分な説明ののちに自身の言葉で状況を正しく表現できる
「認識」:決定すべき事柄を自身の問題としてとらえている
「論理的思考」:決定に至る道筋と決定内容に乖離がない
「表明」:外的要因にとらわれない自身のおもいを表明できている
これらの要素が満たされるとき、本人の意思決定能力は十分と判断する。
- 認知症などで意思決定能力が不十分と考えられる場合も本人の意思決定を排除せず、不足する要素を最大限おぎなうための支援を行う。
- 本人の意思決定能力が不十分と考えられるとき本人とともに、もしくは本人に代わって意思決定を行うものを代理意思決定者という。
- 代理意思決定者となれるもの
1.十分な意思決定能力を有する本人から指名を受け、診療チームと代理意思決定者双方が事前に合意しているもの
2.本人の意思は十分に確認できないが、本人の不十分な意思表示やそれまでの生活歴などから本人の「おもい」、「人生観」、その人「らしさ」を一番よく理解していると考えられ、自身や医療スタッフを含め関係者が合意できるもの
- 代理意思決定の原則
代理意思決定者の十分な理解、認識、論理的思考のもと、本人の「おもい」、「人生観」、その人「らしさ」を尊重しながら、本人がするであろう選択をかかわる多職種との合意の上で選択する。
- 代理意思決定者がいない場合
複数の医師を含めた多職種の視点で本人の「おもい」、「人生観」、その人「らしさ」を想像しもっともその人らしい選択を行う。選択が困難な場合は他の機関の医療スタッフ、介護スタッフ、医師会、行政などと連携し最良の選択を支援する。
- 話し合いの過程、決定事項はカルテ内に記録し、共有する。
- 「おもい」は揺れるものであり、いかに十分な話し合いの末に決定したことであっても本人、代理意思決定者から撤回の申し出があったときはこれに従い再度話し合いを開始する。
- 意思決定が重要となる状況ほど本人の意思決定能力は低下していることが想定されるため、普段から医療的選択に関する「おもい」が本人や関係者から表出されたときは極力その言葉をそのままカルテに記録し付箋を付して必要時に検索できるようにする。